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【AC】機能不全家族と私の中のイネイブラー

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Bekah Russom
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「今の若い子にはわからないかもしれないけれど、私が子供の時代は親に逆らうとか、親に口答えするなんて、ありえない時代だったのよ」「だから腹が立っても言わなかったけど、やっとこの歳になって言いたいこと言うようになったら楽になったわ」

先日私の母がこう言った。そうかそうか、と黙って聞く私。「私はいまだにあなたに言いたいことは言えません」なんて本心を胸に秘めながら。

今年で60歳になった母は、足腰や体力に衰えはあるものの、見た目も未だに若々しく、どちらかといえば元気で行動的で、長く勤めている職場にも現役のままである程度の立場になっている。どうでもいい冗談も言うしふざけて面白おかしいことも言う。10代や20代前半の若いアルバイトの子たちとも仲が良いので、流行りごとや人気の曲なんかも知っていて、YouTubeで見つけたピアニストを応援しているような、明るくて優しい母である。

だけど私は、未だに母が家に遊びに来ることになると、前日から妙な緊張感が走る。例えるなら小学校時代の遠足前夜のようで、緊張感の中にちょっとワクワクする気持ちと、”あれもこれも準備しなくちゃ”と焦るような気持ちが同時に沸き上がる。

別に実の母親がたかだか数時間家に来て、ペチャクチャと喋って帰るだけのことである。だからそこまで何も考えることもないし、部屋が汚くても、おもてなしするものがなくても何にも気にしなくていいはずなのだ。しかし私はそうではない。そうとはいかない。まるで他人が用事があって家をたずねにくるときと同じように掃除をし、約束の時間まで心が落ち着かない。

「楽しませなくちゃ」「何も心配させることがない自分でいなくちゃ」「しっかりしたところを見せなくちゃ」機能不全家族で育った私は、今でも心の中に小さなイネイブラーを住まわせている。自分が幼少の頃、情緒不安定だった母や姉、変わり者の祖母。今にもみんな壊れてしまいそうだった。そんな家庭の中で私は、八つ当たりも暴力もすべて受けたが、それでも「なんとかして支えなくちゃ」と笑ったり、時々泣いている姉を抱きしめたりした。

それで自分が助かったことなど一度もないし、家族がどうにかなったわけでもないのに、何をやっていたのだろう?と今では不思議に思う。結果的には大人になった今でも、自分のインナーチャイルドは癒やされていないのかもしれない。ずいぶん時間も過ぎて、あのころとは何もかも違うけれど、私は母や家族の支援者でいなければという意識がかなり強いのだと感じる。

アダルトチルドレン(AC)の意味や原因とは?「生きづらい」と強く感じる人へ

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Dewangグプタ
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今はHSPやHSS型HSP、ギフテッド、エンパスなど様々な気質を自覚する人が増えてきた。ずっと抱えてきた生きづらさや苦しみ、悩みやつらさを”自己理解”するためにこうしたものはあるはず。家族だからといって必ずしもそこが安全基地というわけではないという”毒親”の概念、幼少の頃の傷が癒えず心のどこかにまだ時間の止まった自分がいるAC(アダルトチルドレン)。これらも自分を知ることで「わけのわからない辛さやモヤモヤ」に名前や理由や意味付けができ、ストレスを和らげるためにあるのだと思う。

自分を客観視できることは、自己理解を深めるためにとても重要なことだ。私も、家族に会う時はいまだに緊張感が走るけれど、「なんかよくわからないけど疲れる」と感じてぐったりするより、「私の中のイネイブラーちゃん、また頑張っちゃってるよ……」と自覚しているだけでずいぶん違うものだ。そして、私は自分の中にいる小さな頑張りやに、許しを与えてあげるようにしている。

「いいんだよ。もう支えなくていいよ。頑張らなくても大丈夫。大丈夫だよ」

それでもなかなか平気にはなれないけれど、30代に突入した今、20代の頃とは比べ物にならないほど気持ちが楽になった。目に見えない何かを、目に見えるものに変えていく力が、人間にはきっとある。そして人は「私はこの○○という気質です」「私はACです」なんて一括りでは語り切れないものだ。様々な性質や気質、人生の経験からくる後天的な傷や強さ、家族や恋人、たくさんのものが折り重なって今のあなたがそこにいる。

機能不全家族で育てば、生まれつきHSPでなくても、常に人の様子を伺ったり気持ちを読み取ろうとする子供になることで敏感になる人もいるだろう。人生経験が複雑で痛みを多く知っていれば、エンパス(強い同調・共感)のように過去の自分と重なって涙が出る人もいるだろう。だから人間は面白いし計り知れない。

私はどんな生い立ちも気質も、より深くとらえることで自分を許したり自分に声をかけてあげられたり、傷を癒やす突破口になると信じている。そしていつかは自分の強みとして堂々としていられるように。/kandouya編集部 森花

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