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【episode4】愛について考える熱帯夜

愛されたい。

そんなことを誰もが願ってやまない。それでも愛情っていうのは難しい。私は最難関なものだと昔から思っている。

蒸し暑い。蒸し暑くて寝苦しくて、汗をかきながら夜にクーラーの掃除をしだすのも、子供の寝汗をそっと拭うのも、愛なのだろう。

殺伐とした世の中。今日はある夫婦の話をしたいと思う。

まだ私が18歳くらいの頃、当時付き合っていた社会人の彼に紹介されたカップル。

男性は私の彼と同じ職場で、その彼女は5つ年上のサバサバした明るい女性だった。

人付き合いが嫌いで人見知りだった私は、どちらかといえば彼氏さんの方よりも、彼女さんと仲良くなれるか不安だった。

大体なんの意味があって彼女さんまで紹介され、グループづきあい的な、Wデート的なことをするのかと、あまり乗り気ではなかったのを覚えている。

だから、はじめて食事をした和食居酒屋で私達4人、とても仲良くなれるなんて思いもしなかったのだ。

今思えば、彼の同僚であった彼も彼女も、私が1番年下であるとか、何をやってるかとか、そんなことなんて1ミリも気にせずに接してくれたからかもしれない。

4人でカラオケに行ったり、お互いの家に泊まったり、寒い時期にはスキーに行ったりもした。4人の中で一人だけインドアな私が、滑らずにずっと雪だるまを作っていても、「文系スゲェ」と否定せずに笑ってくれた。

私と私の彼がケンカしたときも二人は家に呼んでくれてとことん付き合ってくれたし、時には叱ったり、一緒に泣いてくれたこともあった。

そして1年後、友達カップルは籍を入れた。私は、二人の結婚の証人欄に名前を書かせてもらったのだ。安っちいマグカップだったけれど、二人へのお祝いに色違いのものを雑貨屋で選んで渡したのを覚えている。

ちょっと繊細で生真面目、誠実でスタイルのいい彼。言いたいことをはっきり言うけれど、バレンタインには彼の分だけ、手作りチョコに金箔を乗せてあげるようなかわいい姉御肌な彼女。

ふたりのことが、大好きだった。カップルとして、夫婦として、個々に人間として、友人として。

そして————

10年後、私は二人の二度目の証人になった。

慰謝料や新しく住む家の話、いつ出ていくのか…。「離婚の立ちあい」として、疲労困憊な彼と、もう吹っ切ったようにお金の話を淡々とする彼女の間で、どんな表情をすればいいかもわからずに。

なぜわざわざ人を立ち会わせるのか。約束を守るかどうか「信じられないから」だ。

Photo by Sarah Cervantes on Unsplash

10年という歳月は、長いのか短いのか。少なくとも、4人でいたあの頃とは何もかも違っていた。

それは私があの頃の彼と結局別れて、今は別の人との間に子供をもうけていることや、いつだって優しい表情をしていた友達夫婦の空気が、黙っていたって分かるほど冷え切っていることが物語っている。

付き合っていた当時から、セックスレスだった二人。それも私は知っていた。

でも、レス問題を早くから抱えていても結婚を選んだ二人に、身体より心で強く繋がっているのかもとさえ思っていた私は甘かったのかもしれない。

本当は子供も欲しかった彼。レス問題から逃げるように、スポーツや飲み会が楽しみだった彼女。

昔は私にもよく手料理をふるまってくれた彼女だったから、全然家事をやらないなんて想像もしていなかった。

「ふたりが遊びに来たときは、家を片付けていたのは俺。それに大体は、押し入れに色々押し込んでいたんだよ」

彼は悲しい顔で私に話した。

「一時期あの人働かなくなって、家賃も払えないから就活するのに義両親の実家行ったの。そこでどれだけ義母に嫌味言われたか。あたしの洗濯物だけ分けられたりもしたんだよ。全く関係ない身内のためにお金貸してって言われたり。意味わかんないから。」

彼女も、もう糸が切れたようだった。

すべてすべて、話せないたくさんの出来事が二人にはあったのだ。

昔は、「私達、買い物を別々にしても似たようなものを買っちゃうんだよ、ふふふ」なんて目を合わせて笑い合っていた。

私は、何もできなかった。何もできることがなかったし、あるはずもなかったのだろう。悔しくてやり切れない思いがしても、二人はもう引き返すことはない。

やがて彼には好きな人ができ、離婚しないまま関係を持つに至った。浮気のうの字もないほど、一途だった彼が。

不倫の発覚と共に、二人がわかっていても先延ばしにしてきた「終わり」へのカウントダウンが一気に始まった。

二人は私の目の前で、淡々と念書を交わした。

本当に最後の話し合いだった。

沈黙の中、私が二人にかけた言葉はひとつだけ。

「私は、今でもどっちの味方でもないしどっちの敵でもないよ。二人の味方だよ、、、、」

私が泣くのはなんか違うと思ったのでこらえたけれど、堪えられるようになった自分も、少し憎たらしく思った。

愛されたい。

誰もがそう願ってやまない。けれど愛は難しい。最難関だと私は思っている。

人は目に見えない場所で悩み、葛藤し、苦しんで、ほんの小さな歯車のズレから、大切な時をすべて愛によって複雑にしてしまうこともあると思う。

それでも、また愛を探して、自分が滑稽でも、誰かと巡り合うのだ。

後日、二人から別々に私へのLINEが届いた。

「最初から最後まで見守ってくれてありがとう。迷惑かけてごめんね。」

少し文面は違っても、大体同じ内容だった。大体同じ内容をくれる二人は、別々に生きていく。

二人の始まりと終わりと、そしてこれからも変わらずに味方でいることだけが、私なりの二人への愛だと、今は納得している。いや、納得させている、かな。

kandouya編集部/モリハナ

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