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トラウマとはいったい何?克服方法と消えない記憶の扱い方

「トラウマ」とは、心の外傷を指す言葉。日常のあらゆる場所で、過去の嫌なできごとや、心が傷ついたことを「トラウマ」と表現するのを見聞きすることも多いはずです。

外傷、ということは体で言うならば「ケガ」のようなものですね。軽いケガから、全治何週間という大ケガ、命を脅かすようなケガまで、その範囲は幅広いです。

それは心も同じことであり、小さな日常の「嫌な体験」から「自分の存在価値」までもを脅かしてしまう、大きな心的外傷まで多岐に渡ります。

トラウマという言葉が一般の人にも浸透し、ごく普通に、ラフに使われるようになりました。それにより「トラウマとはいったいどういう記憶のことをいうの?」という疑問が浮かんでいる人も多いのでは。

この記事では、特定の出来事や対人関係で追ったトラウマを人知れず抱えているあなたに向けてお話します。

トラウマって誰にでもあるもの?

「失恋がトラウマで……」「この前みたホラー映画がトラウマになっちゃって」

日々、このようにしてトラウマという言葉は気軽に扱われるようになりました。立ち直れないようなできごとの経験も、昨日のホラー映画のワンシーンも、同じトラウマという言葉が使われます。

また「心の傷」「過去の傷」「フラッシュバック」のような、トラウマに関係する言葉そのものが非常に簡単に使われているように感じ、つらい体験を話しにくい空気も少なからずあるのではないでしょうか。

トラウマという言葉のニュアンス

トラウマとは、心の奥深くにある心の傷です。しかし、今の世の中では「嫌だった出来事」の総称としてトラウマという言葉を使っている人も少なくありません。

怖かったこと、つらかったことを「トラウマだ」とすると、本当に根深い問題を抱えている人も「まぁ誰でにでもそういうことはあるよ」と理解されなかったり、事の重大さが隠されてしまったりする危険性もあると私は感じています。

トラウマの解釈は、専門家によっても異なる

トラウマという言葉は、専門家によってもその解釈の度合いが異なります。

自覚できている時点でそれは本当のトラウマではないとする精神科医や、思い出した時に嫌な気持ちになるならそれはトラウマだとする人もいます。

結局はただの「言葉」にすぎないのでしょうが、自分の状態を知りたい人からすると「じゃぁいったいトラウマって何なの?」「どの程度の傷ならトラウマと呼んでいいの?」という疑問が残ることもあります。

トラウマは甘えなの?

トラウマは存在しない、トラウマは甘えであるといった見方も、実際にあります。有名な心理学者のアドラーは「見かけの因果律」を提唱しており「AだからBはできない」という説明において、ABの因果関係はまったくないと説いています。

このことからも「なんでもトラウマのせいにしてはいけない」「結局は自分次第」などといわれ、つらい経験のことでいつまでも悩んでいること自体が悪いように感じてしまうことも実際多いものです。

甘えかどうかは、自分の心に問えばわかるはず

トラウマが甘えであるかそうでないか、というのはアドラーが決めることでも精神科医が決めることでも、カウンセラーや評論家が決めることでもない。あなた自身の心が決めることです。

自分のトラウマ体験が甘えなのか、本当につらい体験なのかは、自分の心に聞けばわかるのではないでしょうか。なかには、甘えなのか、つらい体験なのかわからないままずっと考え続けている人もいるはずです。

その「納得するまで考えたい」「答えを出したい」と思うことや「自分を甘やかしてはいけないのでは?」という思いは、おそらく本当につらい体験をしたからこそ出てくるものだと、私は考えます。

トラウマ体験をもっているけど、それを無駄にしたくない、克服したいと奮闘しているのであれば、そのトラウマは決して甘えなどではありません。ごく普通の人として、真っ当に、ささやかでも幸せを感じながら生きるために、何ができるかを具体的に考えていくようにしましょう。

自分の意思で治せるトラウマ、治しにくいトラウマがある

自分の意思で治せるトラウマ

嫌なできごとを思い出したり、今の自分と関連付けて考えてしまったりするトラウマは、自分で治しやすいトラウマです。

「私はあのとき〇〇されたから、今これが苦手なんだ」「自分が〇〇が怖いのは、あのときの経験による傷が原因だ」

こうやって自己理解を深めることも、理屈付けすることも、ひとつのステップとしては大事なことです。できない自分がダメな人間なのではなくて、できないなりの理由があると自分を納得させ、自分に価値を与えるというステップです。トラウマを自覚して先に進めない人は、自尊心が低くなっていて自信喪失傾向にあります。

この自信を取り戻させるために必要なのが「今の自分でもいい」と認めることです。トラウマ体験を、今の自分と関連付けるのはこの「自分は自分でいい」と認めるための一時的な材料です。しかし、この思考をずっと続けていると、トラウマ体験が人生のメインになってしまいます。

脳の思考のクセや固着した回路は、自分で意識して治すことができます。もちろん、その手助けとしてカウンセリングやセラピーを受けるのも大いにありです。

自分の意思で治しにくいトラウマ

強い恐怖体験をした場合、トラウマを抱えている場合、身体にその記憶が眠っています。トラウマに関係するできごとや、似た状況、場所などに接触することで、心で感じるよりも先に体が反応します。自分の頭の動きや体の反応を、自分の意思で止めることができなくなるのです。

これはPTSD(心的外傷後ストレス障害)に当たり、PTDSの場合はその他体の諸症状や不安障害など、他の精神疾患を合併することもあるので、専門医を受診することをおすすめします。

精神科に限らず、カウンセリングやセラピーといった場所で、それぞれに合った方法を選んでほしいです。

ただしPTSD症状があっても、自分流のやり方や努力で改善している人もたくさんいます。なぜ自分が今の状況にあるのか、ということを分析したり、自己理解を深めていくこと。また今ある現状からできる限りのストレス要因をなくして、安心・安全であると思える場所で暮らすことも非常に大切です。

トラウマと怒りは似ている?

トラウマと怒りはとても似ていると感じます。トラウマ体験には「なぜ?」という怒りや「どうして自分が」という理不尽さを感じることが多いためです。

怒りや憎しみとトラウマ

人から傷つけられた経験では、特に怒りを溜め込んでいます。トラウマ体験者は過剰なエネルギーが身体の中に停滞している状態になっているのです。

感情の中でも最も強いエネルギーをもつのが、怒りです。トラウマに関係する人物や、状況、理不尽さが強ければ強いほど、怒りにも似たエネルギーが体の中に停滞していきます。トラウマの根が深いと、具体的な内容に触れると動機や息苦しさ、過呼吸、声や体の震えなどを引き起こすこともあり、表に出すことも難しい場合があります。

エネルギーの循環をする

大切なのは、エネルギー循環です。トラウマ体験により、あなたの中には過剰なエネルギーが停滞したままになっているのです。汚れた水が溜まっていて、新しくてきれいな水を注入できない状態……といったところでしょうか。

あなたの中に、ポジティブな考えや、幸福なイメージを入れるためには、トラウマ体験をしっかりと声に出して、吐き出す必要があります。泣いたり怒ったりしてもいいので、誰かに打ち明けて思い切り吐き出せると良いですね。

しかし実際のところ、そんなことができる相手や状況が整わないのが現実ではないでしょうか。そこで、やはりカウンセリングなどにかかって「あなたの中にある毒素を一気に出す」ということをしていく必要があるのです。カウンセリングは、先生にトラウマを治してもらうのではなく、感情を吐き出したり、頭の中を整理するために行うものであり、そのための手助けやサポートという役割を担います。

https://kandouya.net/mentalhealth/5704

トラウマは克服できるの?

トラウマの克服……というのは多くの人が望んでいることです。しかし、克服とは何をもって克服というのか、あなたはわかりますか?

私は個人的に、トラウマを克服するということはあり得ないと思っています。たとえば、身体に大けがを負ってしまった場合、皮膚にその時の傷が残ります。傷あとは薄くはなりますが、完全に消えてしまうことはなかなかありません。

ふとした時にその傷を見て、ケガをしたということを思い出すはずなんです。傷跡を見てそのときの痛かった状況を思い出したり、そのときの光景がふっと頭に過るのは、ごく自然なことではないでしょうか?

そのときに「また思い出してしまった」「過去のトラウマにまだ縛られている」と、自分で自分を責めてしまうのがいちばんの問題点だと考えています。

心の問題も同じように、ふとしたきっかけで当時のこと、そのできごとのことを思い出したり、その出来事が脳裏をかすめるのは当たり前なのです。そこで「あぁ、私はトラウマ体験者なのだ」と自分にレッテルを貼らずに「これが自分である」と思えるかどうかが、克服の鍵となるのではないでしょうか。

「克服」よりも「付き合い方」を身につける

克服しよう!と躍起になるのではなく、トラウマ体験との付き合い方を身につけることの方が大事です。

PTSD症状など、身体に症状が頻繁に出る場合や、それに付随する症状、フラッシュバックの再体験により日常生活が困難な場合は、まずはメンタルケアを第一に考えて休養できることが理想ですね。身体的症状やフラッシュバックの頻度は、体調やそのときのストレス状況によって変化します。

治ったように見えても、ふとしたきっかけで再び引き起こされることもあるので、自分に無理を課さないようにしてくださいね。もしもまたトラウマの記憶により体調が悪化しても、自分を責めたりそこでやけを起こさないでください。それほど、あなたは大変なできごとに耐えて生きてきた証であると、自分を褒めてあげて欲しいです。

トラウマ体験の数が多いほど、磨かれる

トラウマ体験がある人は、精神面でより成長し、自分の深く重い体験から「創造性の高い人」になる傾向があるとされています。373人の40歳前後の男女を対象に、日常で起こったトラウマ体験の調査をした結果、トラウマ体験の数が多いほど創造性が高まるという結果が出ています。

  • 人間関係がよくなる
  • 精神的にタフになる
  • 精神の深みが増す
  • 人生に感謝できる
  • 幸福度が高まる

このように、逆境を経験した数が多ければ多いほど、人間的な成熟度も高まるとされているのです。アーティストや作家、起業家などの中には壮絶な体験をしている人が多く、その人間的な成熟度や、精神の厚みが何かを作ったり、人を動かしたりする大きな力となることがあります。

けっして、あなたもそうなりなさいということではなく、トラウマ体験を適切な順番で、確実に片づけていくことで、その体験ごとあなたの濃密な人生となる……ということです。

トラウマは消すものではなく、自分の一部となっていく

トラウマとなるような嫌なできごと、怖いできごとを体験してしまった以上、それがあなたの中からきれいさっぱり消えてなくなるということはありません。思い出すこともあるし、悲しい気持ちになることだってあります。どうにか、付き合っていくものだと私は考えています。

しかし悲観しないでください。「克服したかな」と思えるときは、その体験も含めて自分であるという、強いアイデンティティに変わっています。自分はダメな人間でもないし、価値のない人間でもない。

そしてトラウマ体験によって自分の人生をあきらめるのはもったいないと気づく……。それが、トラウマ克服の最終ステップともいえるのではないでしょうか。/Kandouya編集部

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