自分の気持ちを大事にしよう、自分をもっとかわいがって大切にしないと……という助言をよく耳にしますが、そもそも「自分がない」ってどういう状態なのかというところで立ち止まってしまう人は少なくないはずです。
世間では今「自分の気持ちをもっと大事にしよう」という風潮が強まっていますよね。個性・自分軸・自己主張・自分らしさ……いろいろなところで「自分ってなんだろう」と考えざるを得ないシーンが増えてきているように思います。
「私って本当に自分がない」「自分の気持ちがわからない」という点で不安になってしまう人に向けて、この記事では「自分らしさ」にとらわれすぎないように、自然に生きる考え方をお話したいと思います。
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自分の意思って、そもそもなんだろう?

何でもかんでも「自分の意思で行動しよう」「自分の意思をいちばんに考えよう」とすると、逆に苦しくなることってありませんか? そもそも自分の意思って、どこからどこまでが自発的なものなのか、とても曖昧ですよね。
人は、日々何かしらに影響を受けて生きている
人って必ず、自分の意思だけではなくて、誰かの言葉や環境の影響を受けているはずなんです。
たとえば、幼い頃に「別に自分は特別これが好き!ってわけじゃないけど、得意だと感じたり褒められたりすることが多いからなんとなく続けている」ということってあるじゃないですか。
もしくは「正直あんまりやりたいことではないけど、そのときどうしてもそれをやらなければならない状況だったからやっていた」というようなことも、多いと思います。
心や脳の中が、真っ白な状態で、そこからムクムクと「自分!」が浮かび上がってくる……なんてことは、実際あり得ないのです。
「自分を出すこと」はいちばん大事なことじゃない
自分の気持ちを大事にすることも、自分軸で生きることももちろん大事なのですが、世の中の人がみんな「自分!自分!」で生きていると、世界は崩壊します。
日本は時代背景や歴史的な部分で、人の目を気にしすぎることや、周りに合わせすぎることで苦しくなってしまう人が多かったです。しかし、最近ではジェンダーレス・フェミニスト・働き方改革など社会的にも「人と同じではなく、自分らしく生きて良い」という解放の動きが進んでいます。
もう時代はある程度変化していて、昔ほど「人に合わせなくてもいい」ということが、社会全体に浸透しつつあるわけです。「過剰に人目を気にするのはやめよう」というだけの話。
たくさんの人々と日常生活を送ったり、仕事をしたりしていく中では「人に合わせすぎず、自分の気持ちを無視しすぎない」というバランスが大事だというだけにすぎません。
「もっと個性を!」「もっと自己主張を!」と頑張りすぎて、逆に「自分ってなんだろう……」「私って、自分の意思がないダメ人間かも……」と、逆に自信を失っている人もまた増えているのではないでしょうか。
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自分がないと、つまらない人生になるって本当なの?

自分がないと、つまらない人生になる。漠然とした人生で終わってしまう……。そんな風に、もっと自分を出すようにと煽ってくるような声も多く聞かれますよね。
じゃあ逆に、つまらなくて漠然とした人生って何なのでしょうか?
どんな人も、毎日色んな感情を抱き、葛藤し、悩み、喜び、達成し、笑っているはずです。どんな人もです。
スーパーでレジを打っているおばちゃんも、駅の清掃をしているおじさんも、サラリーマンも、子育て真っただ中の専業主婦も、学生も、ベンチャー企業の社長も、芸能人も、youtuberも、これを読んでいるあなたも、私も。
人に差などなく、みんな中身は一緒です。みんな日々、無数の選択を繰り返していて、それはすべて自分の意思であり、自分の気持ちでやっていることなはずです。
「自分がない人は、つまらなくて漠然とした一生を終えるんだよ」と、上から目線で主張する意見というのは、極論を言えば押し付けです。
自分がない人なんていない!自分の意思とは「何かを選ぶこと」

自分の意思とは、自分の中から湧き出てくる「アイデア」や「ビジョン」のような壮大なものではなくて、そのときそのときの目の前にあるものを自分で選ぶことに過ぎません。
だから、どんな選択をしたとしても「自分がない」なんてことはないんです。目の前の問題を、自分で選び、決めて生きている以上、どんな人にも自分の気持ちがあり、個性があるということです。
たとえ「誰かの言いなり」でも、それも自分の気持ち
たとえばあなたが、自分の気持ちよりも人の意見で動くことの方が多くても、それを「ダメなことだ」と思って無理に改善しようする必要はないのです。
もちろん、あなたの中に「私は本当はこうしたいのに、それを周囲がさせてくれない!」「私の気持ちを言ってもわかってくれないし、阻止しようとしてくる!」と思い悩んでいるのであれば、話は別なんですね。
そうではなく、まずは人の意見を聞き入れて、それに対して自分がどう動こうかな? というスタンスが合っている人も、非常に多いです。これを書いている筆者も、自分の中から湧き出てくるアイデアや将来ビジョン、野望といったものがほぼありません。
どの人の意見を取り入れるか、この人となら一緒にやっていけそうか、この人の役に立ちたいかどうか……。そういう目の前に訪れたものごとへの「検討」自体が、自分なんです。
人の影響を受けながら生きる人のことを「それって、自分がないじゃん?」「八方美人?」「誰かの言いなりじゃん」と、他人から見えることもあるんですよね。でも、それをあなた自身が「別に私はそれが合っている」「今のままでも、特に支障はない」と思っているなら、それはそれで大いに充実した生き方です。
受け身の人生でも、それを否定しないで
受け身な人を批判する声も多い現代。能動的に、もっと行動的にアクティブにならなくちゃいけないような気持になることもありますよね。
でも、受け身でありながらもそれなりに生活できていることや、平均的な人生を楽しんでいるのであれば、それは成功だといえます。
筆者は「受動的」でい続けることは一種の才能とも考えています。
筆者自身、人に自分から働きかけることがまずありません。あったとしても、何らかの形で失敗に終わるケースが多いので、常に受け身のスタンスを貫いています。
結婚相手も、友人も、仕事仲間も、「どうしてもあなたに会いたくなるんだよね」と言って、向こうからアクションを起こしてくれる人としか付き合いがないのです。わがままなようにも見えるかもしれませんが、その人達だけには全力を注ぐことができるので、結果充実度の高い人間関係を築くことができています。
受け身で自分の意思から行動しない人は、誰かからのアクションに最大のパワーで応えることができるわけです。そういう人がいないと、世の中は成り立たないでしょう。
自分がないってどういうことか、もう一度よく考えてみよう!

自分がない、自分の気持ちがわからないってどういうことなのか、もう一度考えてみませんか。
「どんな自分もあっていい」と思えることは、自己容認のために非常に大切なプロセスです。湧いて出てくるような自己主張や自分の意思を、絞り出したり、探し求めてさまようのってとても疲れます。
どんな人も「自分とは何か」「オリジナリティとは」なんてことを考える前に、目の前にあるやるべきことや、一緒にいたいと思える人に全力で応えていくことの方が大事です。
毎日数えきれないほどの選択をしながら、今生きているというだけであなたにはちゃんと「自分」があり「自分の気持ち」を操っているわけです。自分らしさの迷宮に入り込まないように、リラックスして日常を楽しんでみてくださいね。/Kandouya編集部
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