
「もういい」という言葉、毎日生きていてどのくらい使いますか?
実は筆者は、子供の頃からよくこの「もういい…」という言葉を頻繁に口に出す人間でした。たとえば、親と言い合いになったとき、友達と話し合うような時、自分の気持ちを聞かれた時など、最後までたどり着けずに「もういい」と遮断してしまうことが多々ありました。
しかし、大人になってから気づいたことがあるのです。この「もういい」という言葉が、本当は自分を一番苦しい状態へ持って行ってしまっているということに。
あなた自身なのか、あなたのパートナーや友達、知り合いなのか分かりませんが、「もういい」とよく言ってしまう人、よく言われてモヤモヤしてしまう人へ、伝えたいことがあります。
「もういい」という言葉の裏にある意味や本心って?

「どうせわかってくれない」と対話する気になれない
「もういい」という言葉は、一つの諦める気持ちです。それは、目の前にいる人に対して、自分が本音を話したところできっとわかってくれない、否定されるに違いない、これ以上辛い気持ちになりたくない…と最初から思ってしまうということ。
「どうせわかってくれないんだから、もういいや」という気持ちは、これまでに何度も「理解されない経験」をしているからこそ出てくる気持ちです。
話したあとでわかってくれなかった、というよりは、そもそも聞く耳をちゃんと持ってくれる人が周囲にいなかったのかもしれません。幼少期からずっとありのままの自分を出せなかったことで、心の開き方がわからない人もいます。
いい結果が想像できず、今ここから逃げたい気持ち
たとえば恋人同士で言い合いに発展したとき、「もういい」と言ってしまう彼氏、「もういいや」と言ってしまう彼女、というパターンも多くあるでしょう。夫婦関係でもよくあるかもしれません。
喧嘩をして、このまま討論を続けても、決して仲直りとか、絆が深まったとか、そんないい方向への想像ができず、とにかく「疲れたくない」と逃げ出したい気持ちです。
この場合でも、これまでにお互いが同じパターンを繰り返していることがあります。いつも同じようなことで、ちょっとしたきっかけでケンカになって、同じような態度になって険悪になる……。
その一連の「パターン化」に疲れ、拒否感が強まっている時に「もういい」と遮断してしまいます。
人間不信の人が傷つく前に自分を守るための言葉
人生でよく対人関係で苦しむ人間不信の人は、「もういい」という言葉を使って自分自身の心を守っていることがあります。つらいことを言われる前に自分の感情をシャットアウトしたり、「もういい」と言うことで自分の心を落ち着けていることもあるのです。
一見「人と正面から向き合えない人」という印象を与えるかもしれませんが、一概にそうとは決められません。
自分も相手も嫌な思いをしないように、ヒートアップしないように、「もういい」と言っている優しさも含まれています。そのため、よく「もういい」という人は何も考えずに逃げてばかりいるわけではなく、頭の中で冷静に物事を考えていることもあります。
相手の事を「嫌い」なわけではない!
話そうとしているのに「もういい」と言われると、悲しい気持ちになる人もいると思います。ですが、ここまでお話してきた本心があるからと言って、相手の事を嫌いということではありません。
嫌いなのではなく、「不安」なのです。怒っていても黙っていても、心の中は「不安でいっぱい」と考えるのがいいでしょう。そして、「もういい」と言う癖があるのは本人の問題で、周囲の人が悪いわけではありません。
ですので、パートナーや恋人で「もういい」と言われたからといって「愛されてないんだわ」とは思わないでください。
「もういい」と言われた時はどうすればいい?対処方法

「なんで逃げるの!?」などの深追いをやめる
人が「もういい」と言ってきた時は、今すぐに落ち着いて話し合いを進めることはできない、と思った方がいいでしょう。それは、以前は良かったとしても、現状としてあなたと相手との間に確かな信頼関係がないと言えるからです。
パートナーだった場合、お互いに長く一緒にいるのだから分かっているはずだ、と思ってしまうものですよね。しかし、相手が「もういい」と諦めたような言葉を言ってきたことに腹を立てても、状況は悪化するばかりです。
まずは「もういいや」と言われたら、一歩引きさがり、「今はやめよう」と受け止めてあげてください。
そうすれば、相手は「聞く耳のある人だ」と感じやすくなり、感情が落ち着いたときに話し合うことができます。
人格を否定するようなことを言わない
一生懸命に向き合おうとしているのに相手が向き合ってくれないショックから、人格を否定するような言葉を投げかけてしまうこともあると思います。特に親しい間柄だと、感情的になってしまいますよね。
その気持ちは分かりますが、強い口調で否定されると、相手はずっと忘れられないほどに傷ついたりします。
極端な例をあげると、「都合が悪くなったらすぐ逃げて自己中だよね」「そんな風だからいつも人間関係がうまくいかないんじゃないの?」「その性格、ホントにイライラする!」などの言葉です。
あなた側の気持ちが「本当はちゃんと本心で話して欲しい」「大事に思っているのになぜ伝わらないの?」という気持ちなのだとしたら、勢いに任せて否定せず、待ってあげたほうが、いい関係を作っていく事ができるはずです。
ささいな「わかってくれた」を増やすステップが大事
もちろん、頻繁に「もういい」と言ってばかりでは、当の本人も対人関係をうまく築きにくいままになります。しかし、最後まで向き合おうと思えるようになるには、身近な存在が「わかってくれた」という小さな出来事を積み重ねることが一番の近道です。
たとえば、何気ない愚痴や弱音をとことん聞いてくれる人がいる。何かに迷った時に、一緒に考えてくれる味方がいる。だめなところも、否定せずに「いいよ」と言ってくれた。
そんな、子供のようなステップが、「もういい」と諦める回数を減らしていくのです。すぐには変わらないかもしれません。それでも愛を持って接してくれる人がいることが、心を開く大きなきっかけになります。
「もういい」とすぐに言ってしまうあなたへ

もう少し対話のシャッターを下ろすのを待ってみませんか
「これ以上向き合うと、自分は傷つく」。
そういう本能が、あなたには強く備わっているのだと思います。嫌な思いをたくさんしてきた人でしょうか。ですが、「もういい」の一言ですぐに終わらせてしまうことで、本当はあなたにとって「いい方向へ向かうチャンス」だった話が、知らないうちにどこかへ消えていることもあるのです。
人と真正面から向き合うのって、とてもとても疲れます。まして、それをやったのにも関わらず分かり合えなかった時の疲労感は、たまらないものがありますよね。筆者はその気持ちが、よく分かります。
人を信じられなくても、自分を守ることも、悪いことではありません。
でも、せめて恋人や配偶者、長年の友人など、真摯に向き合おうとしてくれている人の気持ちはちゃんと受け取りましょう。そして、できるなら自分の首を絞めないためにも、もう少しだけ対話のシャッターを下ろすのを待ってみませんか。
あなたが思っているより、あなたに愛情を向けてくれる人がいます。少しだけ向き合ってみれば、新しい発見もあります。その姿勢が、結果として悪いループを断ち切ってくれる可能性も高いです。信用できないかもしれませんが、少しずつです。
きっと何年後かには、「ちゃんと話しておけばよかったな」と感じる物事や人の存在に気付くはず。そのときには、もうそばにいない人や環境もあるかもしれません。大丈夫、あなたはちゃんと向き合うことができます。応援していますよ。/kandouya編集部