
誰かに悩みを相談したり、愚痴を吐いたりしたときに「正直、そういうアドバイスって求めてない……」と思ってしまうことってありませんか?
自分が相談しておきながら、相手に不満を言うなんてきっとわがままなんだろうけど、やっぱりトンチンカンなアドバイスや、アドバイスするふりをしてダメ出しされたり、マウントをとられることって多いんですよね。
極論を言うと、正直なところ人から人へのアドバイスって、あまり重要ではありません。誰かのアドバイスで救われたり、ヒントを得ることもありますが、必ずしもすべての場合に当てはまることではないのです。
この記事では「悩みを相談するとき、正直アドバイスっていらないな」と思ってしまう人に、その心理をご説明します。
悩みを相談するときって、結局「アドバイスが欲しい」という気持ちは薄い!?

人は、悩みを誰かに相談するときに「相手に、最適な解答をしてほしい!」とは全く思っていないことがほとんどです。
- とにかく聞いて欲しいだけ
- 自分の考えが間違っていないか確かめたい
- 自分の状況は他人からみてどう感じられるか知りたい
- 「あなたは間違っていないよ」と言ってくれる味方が欲しい
- 「そういう経験あるよ!」と共感して欲しい
いろいろ例はありますが、とにかく共感してほしかったり、味方になってほしかったり、客観的にどう見えるか確認したい場合がほとんどなんです。
「こうしたら?」「こうすればいいのに」という、具体的な方法論のアドバイスが活きるのは、仕事や何かのテクニックなど、具体的な「やり方」を知りたい場合だけです。
人間関係、子育て、恋愛、結婚……そうした心に深く関わる悩み相談は、ほとんどのケースで「アドバイスを必要としていない」のが実際ではないでしょうか。
悩みや気持ちを「わかってほしい」と「わかってたまるか」の、複雑な心理

人の心理は非常に複雑でわがままなものです。それは、誰しも同じようにもっているので「アドバイスをそのまま実行できない人がわがままである」というわけではありません。
相談相手に「わかろうとしてほしい気持ち」
人は、誰かに共感して欲しい、わかってほしいという気持ちを常にもっています。特に、何か問題や悩みに直面したときは、必ずネガティブな感情が生まれるからです。
ネガティブな感情は、とても大きな「エネルギー」です。エネルギーは循環させないと苦しくなって爆発してしまうものですから、誰かに聞いて欲しい、話してスッキリしたいと思うのは当然です。極端な例をあげるなら、便秘だと苦しいというのと何ら変わりはないと考えています。
ただ、そんな悩みというネガティブなエネルギーを吐き出しても、それに対して「それは違うよ」「あなたは甘いよ」などと、最初から否定的な助言やダメ出し、マウントしかもらえないこともありますよね。
そういう場合「もうこの人には相談するのやめよう」という気持ちに自然になっていくはずです。これは、相手に「解ろうとする気持ち」や「わかりたい」と思う気持ちがないので、エネルギーの循環が上手くできていない証拠です。
相談相手に「わかってたまるかと思う気持ち」
一方で、相手が何でもかんでも「わかる~!」「よくあることだよ~!」というように、軽く「理解した」という態度を示すのも嫌なものなんですよね。
これは人間の複雑な矛盾した心理ともいえ、誰でも経験のあることではないでしょうか。
完全に理解したはずがないのに「わかるわかる」と言い切ったり、まったく的外れな持論を持ち出してきたりすると「あなたに私のことがわかってたまるか」というような気持ちになることもあるんですよね。
これは、相手があなたにとって必要な反応をわかっていない場合や、関係性の浅い人との間でよく起こる摩擦です。
悩み相談は「こうしたら?」より「私にはこう見える」のアドバイスが最適解

結局誰かに悩みを相談しても、ドンピシャリなアドバイスなんてなかなかもらえないことや、できることの方が少ないわけです。
人が成長するために必要なのは、膨大な情報の中から自分に合ったものを、自分で選び取る力なんです。
たとえば、誰かとの何気ない会話の中、ネットでたまたま見かけた記事の一部分、暇つぶしに読んだ本のなかの一文……そういった、膨大な情報の中にあるほんの少しのヒントを、どれだけ集めて繋げていくかということが大事なんです。
人のアドバイスをそのまま鵜呑みにできないのは、相手が自分とまったく違う他人であり、考え方も価値観も選ぶものも感じ方もすべてが違うということを、あなた自身がなんとなくわかっているからなのではないでしょうか。
本当に大事なのは、人のアドバイスをそっくりそのまま受け入れることではなく、日常のどんなささいなシーンからも、自分に必要な考え方や発見、気づきに反応できる力なんです。
人にアドバイスをするつもりで、自分の欲求を満たしている人もいる
「あなたのためになる」という厚意のつもりで、人にアドバイスをしてしまうことがあります。本人は、相手のためにと思ってやっていることですが、実際には「自分の主張をする」「自分の話を聞いて欲しい」という自分の欲求を満たしているだけのことも多いです。
もしくは「人のためにアドバイスをしてあげている自分」に酔ってしまって、当の悩んでいる人を置き去りしてしまうこともとてもよくあるパターンです。
「こうしたら?」ではなく「私はこう思う」「私にはこう見える」
悩みの相談事では「こうしたら?」のアドバイスよりも「私はその話を聞いて、こう感じる」「第3者目線で見ると、こんな風に見えるよ」という視点で話をするのが最適です。
悩みを相談するときの心理として大きいのは「自分の状況や感じていることを、客観的に見てどう感じるか」を確認したい心理です。
悩み事のエピソードを、ひとつの物語として客観的に見て「それはつらいよね」「そういうのって、嫌だよね」と認めてもらえさえすれば、それでOKではありませんか?
ただ、人と人との会話ですから、だんだんとお互いの主張や感想が飛び交い始めます。そのときには「私は、こんな風に思うよ」「個人的には、こういう風に感じるよ」という客観的感想がもっとも穏便です。
相手にジャッジを下す必要はありません。本当に共感できるならそう話せばいいし、共感できないのであれば「私からはこう見えるよ」という視点を話すのがよいのではないでしょうか。
「~すべき」「それはダメ」「なんで~しないの?」というように、自分の考えや方法を押し付けるような言い方をするのはナンセンスですし、それを真に受ける必要もありません。
人に悩みを相談をする人もされる人も「それぞれの問題」と割り切ることが大事

人からのアドバイスを受け止められないとき、「せっかく助言してくれたのに」と申し訳なくなってしまう気持ちもありますよね。もしくは、人に相談したときに「自分が何とかしてあげなくちゃ」と思って、役に立つアドバイスをすることに必死になってしまう人も多いものです。
しかし、結局のところ人は自分の問題を自分で解決していくしかないのです。それがときどきわからなくなって「あの人のアドバイスだから聞いたほうがいいのではないか」と思い込んだり、「私が何とか解決してあげなくちゃ!」と張り切りすぎてしまったりするんですね。
それが人間らしさでもあるわけですが、結局悩み相談に「これだ!」とびっくり仰天するようなアドバイスなんて存在しないのかもしれません。
大事なのは、ふとした会話の中から、今の自分にとって必要な考えや視点、価値観に気づく力、それを選び取っていく力です。
悩み相談にアドバイスはいらない。お互いの「違い」を理解していこう。

人間はひとりとして同じ人間はいません。だからこそ、悩みを相談しても、的確なアドバイスや助言がもらえないこと、できないことの方が多いと理解しておきましょう。
自分と人は違う……それをわかった上で、頭ごなしに否定せずにじっくり聞いてくれる人、愛をもって新しい視点を教えてくれる人。そういう人に、相談したり愚痴をこぼしたりするのは大いにあり!
アドバイスをする人と相談する人はあくまでも上下関係ではなく、対等な会話の相手でしかありません。それを理解すると、相談する相手の選び方も自然とわかってくるし、他の場面での人との接し方のコツもわかってくるかもしれませんね。/Kandouya編集部