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≪short stories≫「いつから、こんなに嫉妬が苦しくなったの?」彼氏と別れるか迷う女の子

こんなに嫉妬が苦しいのなら、彼氏のためにも別れるべきなのかな…

高校生の頃、まだちゃんと恋をしたことがなかった私に、親友はこう言った。

「好きかどうかどうしたらわかるかって?……うーん、やっぱりヤキモチだよ!他の女の子と仲良く話してるのとかを見て、嫌だなって思ったら、好きってことでしょ。」

この時、妙にしっくりきたような気がした。少しだけ気になる男の子が、クラスの可愛い女の子と「おはよ」なんて会話しているのを見て、本当はいつも「いいな」「なんだかモヤモヤするな」って思っていたからだ。

でも今の私は、彼氏に嫉妬が原因で嫌がられたり、変な空気になってばかり。会ってもケンカになる原因はいつも、私の嫉妬。そう、彼氏の中で「私が1番」じゃなくちゃ、嫌で嫌で仕方ないんだ。

嫉妬するのは私ばっかり。パターン化してくる関係と原因

昨日も、久しぶりに彼に会って出かけたのに、ささいなことがきっかけで険悪なムードになってしまった。シーズンを外した、人気の少ない海で、他愛もない話をしていてすごくいい感じだったのに。

砂浜で小さくてかわいいワンちゃんのお散歩をしている女性がいたの。私たちの目の前を通り過ぎていった時、彼氏が「うわ、かわいいな~」って。女性はにっこり微笑んで、少しだけ私たちを見てスッと通り過ぎて行ったんだけど。

なんでもないはずの、小さい小さい出来事。なのに私は……。

ささいなことが許せない…

さっきの「かわいい」は、あのかわいい子犬のことだよね。連れていたお姉さんのことではないよね?私には最近「可愛い」なんて全然言ってくれないのに。なんで簡単に言うの?っていうか、別に、心の中で「かわいい」と思っておけばいいじゃん。口に出して「かわいい!」なんて言ったら、あの女性だって振り向くのわかるじゃん。そういうの狙っては……ないかな。

何を考えてるんだろう。彼氏の横で、嫉妬の気持ちがむくむくと湧いてきた私は、さっきまで笑顔だったのにもう暗い顔。自分でも分かってるしすごく嫌だ。どうしてこんなにくだらないんだろうって、嫌になるよ。犬に嫉妬してるのか、女性に嫉妬してるのか、私にも分からない…。

口数の減った私に、彼氏はこう言う。

「……何?どうしたの?ハァ~、またなんか考えてるんだろ?あの女の人のこと、別に何も考えてないよ俺。」

彼氏も、だんだん私の思考が読めてきちゃってるみたい。いつも不機嫌になるから、パターンがわかって、先に何か言ってくるようになった。「また?」という言葉、もう何回聞いただろう。彼氏も、きっとしんどいに決まってる。

彼氏は私とは正反対の人

彼氏は私とは違う。2つ年上で、基本的には優しい。あまり怒ったり、イライラしたりしない性格だし、友達もすごく多い。アルバイト先で知り合ったときは、いつもフォローしてくれるそんな優しさや人柄に惹かれた。

私はどちらかと言うと友達も多い方じゃないし、自分に自信がない。ルックスもたいしたことないし、誇れるような特技もない…。

だから付き合う前にご飯に行ったとき、私が嫉妬しやすい性格だってことは言えなかった。そんなこと言ったら嫌われると思ったし、好きになってほしかったから、いい子を演じてたのかもしれない。

彼氏だって最初は「ヤキモチ妬いてるところとか、可愛いな」って言ってくれた。だけどもう2年。一緒にいるのがもう当たり前になって、私が思っているよりもっともっと、彼氏は自由に生きてるってことを知った。そんな彼氏のことを知るほど、「どんどん好きっていう気持ちがなくなっていくんじゃないか」って怖くなるの。

だんだんお互いに疲れるように…

そんな本心が言えないまま、彼氏と私の関係はたんだん悪化していった。せっかく会っていても、お互いに「またケンカするんじゃないか」って、構えてるのが分かる。

お泊りしていても、テレビをつけてCMに彼氏の好きな女性タレントさんが出ていればイラっとするし、スマホだって触ってほしくない。彼氏も意識しているのか、私の前では一切女の子の話もしないし、雑誌さえも読まなくなった。

……そして、私たちにとって最大のケンカが、とうとう起こってしまったんだ。

「距離をおこう」と彼氏に言われる

ある夜、彼氏がLINEをしてきた。「ちょっと話がしたい」という、なんの装飾もない一言。正直関係がうまくいっていない私たち。私は何かをその時点で察知していたような気がする。

「わかった」と返信して、すぐに彼氏が私の家までやってきた。玄関を開けるといつもは笑顔になるけれど、今日は笑わない。仕事帰りのスーツ姿のままの彼氏は、部屋について座るなりこう切り出した。

「少し距離を置きたい。喧嘩ばかりで疲れてきた。お前もちょっと冷静になってほしい」

言われた瞬間、息が詰まった。わかっていたような、でも納得したくないような感覚だった。

感情的になってしまった

そこで「そうだね」と、ちゃんと受け止めたらよかったんだ。なのに、言いたくもない言葉が口から次から次へと出てきた。

「なんで?私が重いから?距離を置こうとかって言って、別れるつもりなんでしょ?」「だったらはっきり言えばいいじゃん!」「離れたら、絶対に嫌いになるだけでしょ!?」

こんなことが言いたいんじゃない。なのにもう、止められない……。涙がにじんできた頃、彼氏はため息をついてこう告げた。

「そういうところが嫌なんだよ。どうして、いつも自分の気持ちでしか何も言わないわけ?なんでいつも思い込みで言いたいこと言うわけ?そんなに俺が信じられないなら、別れた方がいいと思う」

「違う!信じられないとかじゃない!!」

さらに言おうとする私を振り切るように、彼氏は部屋を出ていってしまった。

嫉妬が苦しいから別れる?迷ったときはどうするべきか

彼氏と距離を置くことになって、2週間が過ぎた。連絡は、あの日の夜に「もう一度話したい」と感情的なまま送ったLINEに、翌朝「今は何も話したくない」と返信が来て以来、取っていない。

私は、自分の嫉妬や束縛のせいで、大好きな人をしんどくさせる自分を責め続けていた。もうきっと嫌われたに違いない。このまま、フェードアウトされちゃうんだ。私のせいで。いっそ、私から別れを言おうか。その方が彼氏も幸せなんじゃないか。

何度も同じことを自問自答した。

久しぶりに友達に会う

高校時代の友達に、久しぶりに自分から連絡をして会うことになった。1人でいる時間がつらすぎて、おかしくなりそうだったから。もう1年くらいは会っていない友達。電話をすると、とても喜んでくれた。

元気がない私に友達は明るい笑顔で「今の彼氏ができてから、全然会ってくれないからちょっと寂しかったんだよ。」と言った。そういえば、女友達とゆっくり喫茶店でお茶をしているなんて、すごく久しぶりだった。

「私、今彼氏に距離を置こうって言われてるの。たぶんもう別れると思う…」

「それで、悩んでるのね」

「ごめんね、急に連絡してこんな感じで」

少しの沈黙のあと、暗い私に友達は問いかけるように言う。

嫉妬してしまう自分と向き合ってみる

「24時間365日、彼氏の事ばっかりで疲れない?たまにはさ、こうして気分転換したほうがいいよ。だって、全部彼氏に時間を捧げることもないし、気持ちを捧げる必要もないじゃん。」

「えっ?ああ……そうだよね」

「あ!本気で聞いてないなあ?昔から、彼氏ができると全く他の事を考えなくなるところあるでしょう。すべてが恋!みたいな感じでさ。それで、別れるとすっごい傷ついて、私に連絡してくるの」

「…………確かに、そうだよね」

「私はいいんだよ?でも、つらくない?もうそろそろ、ちゃんと自分と向き合って、自立したら彼氏もきっとまた会ってくれると思うの。私もあったから。同じようなこと。しばらく彼氏の事は忘れて、自分の時間を大切にしてみたらどうかな。ここのお店、ごはんもおいしいんだよ。何か頼もう」

友達の言葉は、心にじわじわと染みた。2年間も、彼氏だけに夢中だった私。「自分の時間」なんて、考えもしなかったよ。

過去の事から整理する

私って、いつから嫉妬深くなったんだっけ。なぜこんなに不安がつきまとうんだろう。どうして彼氏を疑ったり、素直に見られなくなったんだろう。眠れない深夜2時のベッドの中で、自分の過去に目を向けてみた。

そういえば、小さい頃から寂しい子供だった。両親は早くに離婚して、いつもさみしかった。「お仕事だからごめんね」って何度も言われて、1人で眠ることもあったなぁ。はじめて彼氏ができた高校2年生の時は、彼氏に好きって言われるのがうれしくて、誰かに愛されることが何より楽しいって思った。

でも……私、自分に全然自信がない。なんでこんなに自信がないんだろう。高校の時の彼氏も、「好きって言って、ばっかり言われるのがめんどくさい」って言われて、結局隣のクラスの女の子に取られちゃったなぁ。あの時、すごく傷ついたなぁ…。

考えているうちに、いつの間にか眠ってしまっていた。

1ヶ月後、彼氏との再会。大切な決断

たくさんのことを考えた。友達が言ってくれた「自分と向き合って」という言葉を何度も噛み締めた。心が潰れてしまいそうになったけれど、それでも本気で向き合った。彼には一切連絡しなかった。

1ヶ月と少し経って、私はひとつの決意をした。彼氏に久しぶりに連絡をして、今度は私が「ちょっと話したいことがある」と言って会うことになった。

1ヶ月以上も会ってないなんて、2年付き合って初めてのこと。彼氏も私も、少しよそよそしい。無言のまま、ケンカしたあの海へ、彼氏が車を走らせてくれた。夕日が沈み始めた頃、彼氏に決意を話すときが来た。

自立して、恋に依存しない女性になる

「別れよう」

私が静かに告げると、彼氏は「えっ?」と驚いた顔を見せた。まさか私の口から「別れよう」なんて口にするとは、彼氏も想定外だったんだろう。でも、私にはちゃんと答えが出ていた。

「今は、別れようと思うの。私、自分に自信がなくて、恋愛でしか愛されたい気持ちを満たすことができなかったんだ。だから、彼氏にいつも色々求めちゃうの。でもあなたを苦しめているのがわかった。本当に好きだから、私は変わっていきたい。自分で目標を作って頑張ってみたいんだ。それでもっと自立することができたら、また付き合いたいです………」

彼氏は長い間、ずっと黙っていた。そして、「わかった」と言った目には、うっすらと涙が浮かんでいたように見えた。潮風で目が染みたか、夕日があんまりきれいで、潤んで見えたんだと、そう思うようにした。

1年後

あれから1年が過ぎた。私は仕事に打ち込んだ。前から好きだった映画を観たり、大切にしてくれる友人と時々会ったりもした。変わったことは、好きな洋服を着て好きなメイクをして、嫌なことがあっても、すぐにクヨクヨしないでちゃんと考えるようになったことだ。仕事でもはじめて評価された。毎日がいきいきしている。

 

そして、今私のとなりには、あの時別れた彼氏がいる。

もう恋愛だけに依存する私はいない。他の女性に目がくらむような彼氏ならいらない、と今なら言い切れる。つらかったけれど、がんばってよかった、自信をつけてよかった。「やっぱりお前がいい」と、何度けんかしても彼に言わせる彼女でいたいよ。

≪END≫

【カウンセラーによる解説】

 

このストーリーの主人公の女の子は、彼氏に対して嫉妬深くなってしまうという悩みから、幼いころの寂しさや満たされない気持ちに気づきました。幼少の寂しさや満たされない気持ちは、形を変えて、恋愛や人間関係の悩みとして表れるものです。

 

女性から男性への嫉妬は「相手の気持ちが自分に向けられていないと感じるとき」に表れます。また、その嫉妬心を言葉にしてしまったり、言葉にしたいけどできない……という葛藤などにも悩むところですね。

 

「嫉妬深い自分はダメな女だ」という劣等感が、さらに恋愛を難しくさせてしまうことも。彼女は、上手くいかない恋愛からいったん距離をおき、女性としてではなく「人間として」の生活やスキルを磨きました。

 

その中で少しずつ自信がつき、一か所に依存しなくても生きられるという発見を得たのでしょう。嫉妬は「してはダメ」と思えば思うほど、深みにはまります。人は、禁止されたり、ダメだとわかっているものに異常に執着してしまう「心理的リアクタンス」という心の働きもあります。

 

自分に「嫉妬しちゃダメ」と厳しくするのではなく、いちど問題から離れて別のことに没頭する方法も、心を落ち着かせて冷静になるきっかけとなります。

 

 

 

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