
「そこに、温度がある人たち。」第十七回は、「七屋 糸」さんのnoteをご紹介したい。
あのね、糸さんはnoteを開いた瞬間に惹かれる「世界観」を生み出すのが抜群にうまいと思う。「読ませる力」があるのだ。「読ませる」というのは、読んでみようかな?と思わせるパワーである。
たとえよく知らなくても、いつも「こういうの読まないんだけどな」という人でも。「なんかちょっと、読んでいこうかな」と思わせる力。それがあるなと、まず思ったの。「七屋 糸」っていう名前もいいですよね。
七屋糸「冷蔵庫の中から愛を込めて」シリーズ

「冷蔵庫の中から愛を込めて」シリーズは、七屋糸さん独自の目線で3行ほどでくくられる。私は最初、「冷蔵庫の中から愛を込めて」を読んだ時、”冷蔵庫”にした意味がちょっと分かった気がした。
「冷蔵庫に入れてとっておけたならいいのにな」と思う瞬間を、切り取っているんだよね。糸さんの「この大切な瞬間愛おしい瞬間、残しておきたい。廃らせたくない。」という想いがまさに”冷蔵保存”されてゆく。
「冷凍庫」にしてカッチカチにしてやたらと保存し固めないところがいいよね。下手したら繊維が壊れてしまったりするし。色んな意味で保存しすぎも考えもの。
冷蔵庫という絶妙な温度で、「忘れてしまわないようにそっと、しまっておいた」のだなって思った。ねえ、なにこれ~~~。素敵の温床見ちゃったけど。恥ずかしくなってくるわ。
「そういう意味じゃねえよ」って思われてたらどうしようね。笑 森花としては、このように思いました。はい。読んで読んで、とにかく読んで。
「今年の冬は彼女のために」https://note.com/ichii_miyanami/n/n9766fa9f2d3f
「本当だよ。もうとっくに終わってたから」
「嘘。だってまだ好きなんでしょ」
「好きじゃないよ」
「みやこちゃん、さっきから変だもん。ねぇ、どうして、」
「だから、好きじゃないって言ってるでしょ!」
https://note.com/ichii_miyanami/n/n9766fa9f2d3f「今年の冬は彼女のために」
物語がまたいいんだわ。(なんか井戸端会議中のおばちゃんみたいになってきたけど気にせんといて笑
「今年の冬は彼女のために」では、思いをぶつけなかった自分を悔やみ、後悔した後の気づき、そしてそのあとに得られたもの、がエピソードで伝えられている。
その奔放さにちょっと苛立っていた友人さえも、自分にはないものを持っている。そしてどうしようもない時、そんな人が自分を救ってくれる。そんな友情も描かれる。
読み始めるとあっという間に終わってしまった。っていうことは、それだけやはり「読ませる力」があったということ。忘れた頃に、物語の核心へと立ち戻らせるラストの一行まで読むことをおすすめする。
最後に:なくしたものをそっと返してくれるような七屋糸さんの物語。自然とマウスが動くような世界観。これを意図してやっていないのはわかる。天性のものだと思う。”できちゃってる系”の人です。だからきっと、心動くよ。
七屋糸さんのnoteはこちら→https://note.com/ichii_miyanami
七屋糸profile:誰かの「ズレ」が楽になるような文章を目指して。2018年に脱・ブラック企業して今はマイペースなOL生活。#月刊撚り糸にて毎月7日に小説を公開しています。『冷蔵庫の中から愛を込めて』連載中。お問い合わせはTwitterのDMまで。
kandouya編集部/森花