昨今、HSPブームが起こり、敏感で繊細な人が注目されるようになりました。深い洞察力から有能だという見方も徐々に広まりつつあるのではないでしょうか。しかし、その一方で、真逆とも言える「鈍感力」の高い人がいるのも事実です。「鈍感」と聞くとあなたはどんなイメージがするでしょうか?
悩みやすい人や敏感で物事を考えこんでしまう人にとっては、ある意味「そんな風に鈍感でいいなあ…」なんて羨ましくもあるかもしれません。場合によっては「あんまり考えずものを言っているのでは?」と感じてイラっとくるような人もいるかもしれませんね。
今回はそんな「鈍感力」の高い人の良いところに着目し、メリットデメリットを知りながら、どちらかといえば鈍感になれず苦しむ人が学びたい部分について触れていこうと思います。
良い意味で鈍感力の高い人ってどんな人?その良さとは
あなたの周りにもこんな人はいませんか?鈍感力の高い人の特徴と魅力から考えていきます。
1.スルースキル高◎
良い意味でスルースキルが高いというのが、まず第一に言えるところでしょう。鈍感といっても「何も考えてない」「いい加減に人付き合いをしている」ということではなく、マイナスなことが耳に入ってもしんどくなるほど深く追求しない”鈍感さ”があります。
たとえばHSPの人や敏感なタイプの人は、人間関係でも仕事でも、他者の言った言葉や行動の裏側、意図や相手の本心、言われてもないけどこうかもしれない…という予測をし、読み取ってしまいます。それは一種の才能でもありますが、鈍感力の高い人は、相手の裏側や意図までは深追いしないスルースキルがあるんですね。
仕事で軽いミスをして「もうちょっとしっかりしてくださいね」と上司や先輩に注意されたとして、敏感な人は「なぜできなかったのだろう」「きっと相手は失望したに違いない」「もしかしてこうしなかったのが原因ではないか」とぐるぐる思考に入ったりします。
一方で鈍感力の高い人は「やってしまった。確かにもうちょっとしっかりしよう」とその時言われたことにだけ反省し、自分を苦しめる様な”かもしれない”をスルーすることができるのでしょう。
本当はこのほうが、指摘や注意をした相手にとっても、言われた自分自身も楽で、失敗の連鎖や予測からくる自信の喪失が少ないというのは納得できる話ですよね。
2.嫌味に気が付かないので執着されにくい◎
鈍感力の高い人は、人から嫌味を言われたり、ちょっとトゲのある言葉をあえて投げられていても気づいていないところがしばしばあります。「気づいていて無視できる」ではなくて「嫌な意図を持って相手が言っていることに気付かない」のです。
そのため、他人に悪意や嫌悪を抱くことがそもそも少なく、相手からすると嫌味を言って凹ませたいと思っていたはずが効果がないので、逆に恥ずかしくなってくるのでしょう。
人にネチネチと攻撃をしたりマウントを取ったり、いじわるをしてしまう人は「反応を見たいから」言っています。なので鈍感力の高い人は、早々に「この人に言っても仕方ない」と粘着されなくなる、というメリットがあるでしょう。
いつの間にか敵だったはずの相手が諦め、気づけばなんとなく仲良くなって和気あいあいとしちゃってる!?なんて平和なパターンもあるかもしれませんね。
3. 人付き合いが素直でシンプル◎
鈍感力が高いからこそ、性格が子供のように素直で、難しいことがわからないだけに非常にシンプルなやりとりができるというのも、鈍感ならではの魅力ではないでしょうか。
たとえばHSPの彼女が感情的になっていても、鈍感力の高い彼氏であれば「なに怒ってるの?大丈夫?ごめんね」となりやすいわけです。
ただ敏感であったりしっかり者な彼女がそこで「なにがごめんねだ!なんで怒ってるかもわからずに言うんじゃないよ(呆)」という風にもなったりするので、衝突もありますが、彼女が怒っても「うんうん」と変に余裕があるようにも見える、ずるくて素直なタイプです。
色々なことがよく分かり、深く考えて生きることもとても大切ですが、それは同時に難しいこともたくさん考えることになり、生きづらくもあります。鈍感力の高い人の何とも言えない「難しいことはわからないけど、一生懸命聞くから許して」というシンプルで分かりやすい姿は、ある種魅力的でもあるのでは。
4. なんだかんだで息抜きがうまい◎
鈍感力の高い人は、「なんだかんだで息抜きがうまい」とも言える人でしょう。鈍感タイプだからといっても、全くストレスが溜まらないわけではもちろんなく、疲れることもあります。でも、敏感な人と大きく違うのは”息抜きの仕方をわかっている”というところではないでしょうか。
HSPで例えると、自分がストレスフルになりつつあるのがわかっていても息抜きがうまくできません。それはなぜかというと、自分の事だけを考えて行動する、ということが大の苦手だからです。
息抜きがしたいと思っても、それが1人の時間を作ることであったりよく眠ることであったりするのですが、その間に徹底して一人になるということも不器用でできない人が多いのです。
寝ようとしても人から連絡がくれば相手の状況に配慮するセンサーが動きますし、1人になりたいといってもその場の空気を読み大事にしてしまいます。
その点でいえば鈍感力の高い人は、「人の事を気にしない」という時間を設けることができ、誰かに用事を任せてふらっと実は遊びに行っていたり、仕事でも「今日はもうここでいいや、あとは○○のうまい○○さんに任せよう」と完璧主義的な発想をせずに、限界まで抱え込むことが少ないと言えるでしょう。
だからこそ、よい意味で鈍感力の高い人は、仕事でも上手に世渡りできたり穏やかでいられたりして、結果的に人からも好かれやすく好印象になるのかもしれませんね。
HSPや敏感な人が「鈍感力」を少しでも手に入れるには!?
自分の事を観察し、第三者的に見つめること
敏感な気質のある人は、自分と他人との線引きが非常にあいまいで、人の気持ちが我がことのように入ってきてしまうところもあるため、感情がわからなくなりがちです。なので「これは自分のために考えているのか?」「自分にはまったく関係ないことで考えているのか?」ということをはっきりさせていくことが必要になってきます。
そのためには、自分でありながら自分を観察しているように、「今、自分はどういうことを考えているのか」と自覚していくことが効果的です。
- これは本当に自分が考えるべき「自分のこと」なのか
- 必ず自分が考えなくてはいけないことなのか
- 必要以上に、相手の裏まで考えて配慮しようとしていないのか
こういったことを、ある意味他人のことを考えるように、第三者の目線を持って自分を観察します。
そして、それが今この瞬間に答えを出すべきじゃないことだ、今かならず自分が気を遣わないとならないことではない、ということに気付いたら、意識してその考えをシャットアウトする練習をしましょう。
こうした「意識の遮断」を繰り返し練習することで、徐々にではありますが、鈍感力が身についてきます。
身近にいる鈍感力の高い人に、素直に従ってみることも必要
どうしても、どこにいてもよく考えている方の人が決断を迫られたり、「考えてほしい」と相談されることの方が多いものなので、誰かに委ねるとか判断を任せるということがなかなか難しい場面も多いことでしょう。
でも、時々は少し鈍感であっけらかんとした人の意見を参考にし、あまり考えずに「そうかもね」なんて言いながら任せてみることも必要ではないでしょうか。
そうすると無駄に考えていたことや取り越し苦労になっていたことがいい意味で削がれて、すんなりとうまくいくこともあります。
そこで「でもこれで大変なことになったらどうしよう?」「大丈夫かな?」という不安が沸き起こっても、あえて「なんとかなるさ」とスルーしてみる勇気も大切です。そして、何もかも自分で背負うのではなく、失敗しても責任を分配することがあってもいいのです。
考えること、気遣うこと、想定や予測することに疲れたら、鈍感力のある人を見習うというのも一つの方法ですね。
人の「悪意」に気がついても、関係ないところまで踏み入らないこと
敏感で察する能力に長けた人は、自分に関係ないことでも気づき、心配したり悲しくなったり、何かしたほうがいいのかな?と見て見ぬふりができず苦しくなることも多いです。
どうしても気づいてしまうのは仕方ないことなので、自分に直接関係あるのか、ないのか、そこで打算的でもいいのでわかっていても踏み入らない工夫をすることはとても大きな意味を持ちます。
たとえば自分とは関係ない、もしくはそこまで親しくない相手や人が人間関係で困っていても、気づくからといって必ずしも手を伸べたり声をかけたりする必要はありません。
こういうことを言われると「そんなのは人としてひどい」とか「いじめに気付いているのに助けない人と同じじゃないか」というような正義感との間で揺れ動くこともあるかもしれませんね。
しかし、敏感で色々なことを余分に抱え込む人は、多少計算をして付き合うくらいがちょうどいいのです。
敏感さも鈍感さも、要するにどちらがいい、どちらが正しい、ではなくそれぞれの良いところを吸収し合ってバランスを取りながら認め合うことが大事なのです。
悩みや人間関係のつまずき、うまくいかないこと、うまくいかない時期は誰にでもありますが、大抵はその人が本人で解決しようとすることでその人の成長につながりますし、解決できる力を持っているのです。
敏感な人、察する人、予測がうまい人は、誰かの無料カウンセラーではありません。そして、鈍感な人は「何も考えていない能天気」なわけでもありません。
鈍感力の高い人が持つ魅力も、敏感な人が持つ魅力も、うまく分け合ってよいところを取り込み、自分と他人との区別をはっきりさせること。多少冷たくても線引きをして無関係なところへ踏み込まないようにすることで、個人個人のペースを守り、無理をしないで過ごせるのではないでしょうか。/kandouya編集部