
HSPは、非常に共感性が強く、想像力豊かである特性をもっています。HSP気質をもつ人は理解力が高く、人の心や背景を読み取る能力にも長けています。
その想像力は「マインズ・アイ」によるものかもしれません。
この能力は、非常に多くのことに役立つ反面、HSPである本人を苦しめることもあります。この記事ではマインズアイの特徴・うまく付き合うための方法をお伝えします。
HSPが持ち合わせている『マインズ・アイ』とは?

マインズ・アイとは、まるでそこにあるかのように、ものを想像することができる能力。
物だけでなく、人の感情や背景などを想像し、実際に自分が体験したかのように感じてしまうのも、マインズ・アイの特徴です。
物質のイメージ能力に優れている
マインズ・アイをもっているHSPは、ここにリンゴがあると想像すれば、その形や色だけでなく、においや感触、食感までもを、リアルに想像できます。
HSPの専門家医として有名な、長沼睦男氏は自著の中でこんなことを書き記しています。
たとえば、私とマインズ・アイのある子が向かい合って座っています。
その子に、「いま、きみの手の上にケーキが載っていると思い浮かべられる?」と聞きます。
すると「うん」と返ってきます。
「それは何のケーキ?」と聞くと「チョコレートケーキだよ」と言います。
(中略)
私が「いま、きみはそっち側からケーキを見ているけど、ケーキの後ろ側は見える?」と聞くと
「ああ、先生の側からってこと?見えるよ」
と言って、私の側から見たチョコレートケーキのありようを描いて見せてくれます。
引用著書:長沼睦男「子どもの敏感さに困ったら読む本」
芸術家にHSPが多いのは、このマインズアイの能力に長けていることも理由の一つ。
想像力や・コミュニケーション力・表現力などに関係する、右脳がよく発達しているのです。
人の気持ち・状況・背景に対する共感力

HSPは人の気持ちに影響を受けやすく、一緒にいる人や入ってくる情報によって、気分も変化します。
例えば……
- 映画の主人公に感情移入して号泣してしまう
- 震災や災害の映像を見ると、体調が悪くなる
- 暴力的な映像、刺激の強いシーンを避ける
- 一緒にいる人の悩みや悲しみを、自分のことのように感じる
このように、自他の境界が薄く、遠くの地や知らない国で起こっていることや、物語の中のことも、自分自身のことのように強く、深く受け止めやすい傾向があります。
これも一種のマインズ・アイではないかと考えられます。まるで自分がそこにいるかのように、まるで自分に起こっていることかのように、想像できてしまうのです。
物に対するマインズアイは、才能であり特技になります。絵や写真、音楽など、クリエイティブな活動には欠かせないもの。見えない部分まで想像して表現することや、様々な角度からの視点を持っているのは、優れた才能なのです。
HSPの想像力が、デメリットになることも多い

他人の気持ちや、他で起こっていることに影響されやすいという特徴は、厄介なものです。
自分で自分のこの「感情へのマインズアイ」を自覚して、うまくコントロールできれば問題ありません。
ところがそれに振り回されて、心労が増えてしまうこともありますよね。
私のマインズアイ体験談
私は、他人の過去のつらい経験などを聞くと、ふさぎ込んでしまうことがあります。先日ある人が、つらかった過去のことを、ほんの少しだけ話してくれたことがありました。
確かに壮絶な体験で、並みの経験ではなかったのですが、私はその背景や彼女の日常さえも想像してしまい、震えが止まらなくなってしまいました。
また、友人が公開しているブログ記事を読んだときのこと。いつもは見せない、彼女が抱えているダークなものを見た瞬間でした。
見ただけ、聞いただけ、読んだだけで、自分も同じ境遇にいるような気がしてしまい、とてもしんどい。映画やドラマで泣くことは最近めっきり減りましたが、実際に人が経験した話を本人から聞くこと、本人の書いた文章を読むとで、その状況がダイレクトに伝わります。
さらに、そこに至るまでの背景や、その後の生活、今どんな思いで生きているのか、そこまで想像してしまうので困ります。
その想像が、当たっているかどうかは別問題。全く見当違いな想像をしているかもしれなし、私の想像ほど本人は困ったり悩んだりしていないかもしれない。でも、やっぱりそこにいる他人の感情と、自分の感情の境界線が薄いように思います。
HSPがマインズ・アイによって、苦しくならなたいためには?

人の感情や背景に対するマインズアイは、上手に付き合ってメンタルを鍛えていくことが必要です。
私も、未だにふと共感性の強さに苦しむことがありますが、付き合い方さえ分かっていれば大丈夫。
「自分に起こっていることではない」と意識的に言い聞かせる
メンタルトレーニングでも大事だとされていることですが「自分自身に、意識的に言い聞かせる」という行動はとても大事。頭ではわかっているのに、気づいたらいつも同じパターンになってしまうことって、本当によくありますよね。
- これは自分のことではない
- 相手の経験を聞くことは、背負うことではない
- 自分は自分の生活を守ることが最優先
こんな感じで、自分に必要なこと、自分と他人はそれぞれ別の世界を生きているのだということを、意識的に考えて、言い聞かせます。
助けたいという感情を捨てる
- 助けたい
- 力になりたい
- 私なら相手を救えるかも
そう思えば思うほど、自分自身が苦しくなってしまいます。
自他の違いを言い聞かせるのと同時に、「自分が助けなきゃ」という感情を捨てることも大切。もし自分が相手の立場だったら、私に助けてもらうだなんて考えるでしょうか?
身近な問題と受け止めすぎず
- 傍観する
- 静観する
- 第3者目線で見守る
このように、適度な距離感を持つように意識しています。
自分にとって刺激となるものを排除する
影響を受けてしまう映像・物語・人間関係などを、正しく選択することも必要です。
- 震災や災害の映像はなるべく避ける
- 暴力的な映像を避ける
- SNSなどの勝手に入り込んでくる情報を遮断する
- 自分の感情を持っていかれる相手と付き合わない
人の感情や物語、ニュースの出来事に共感することはとても大切ですが、それによって自分自身が強いストレスを感じるようでは意味がありません。
境界線が薄いことと、共感性が強いことはとても似ていますが、実際は違います。
境界が薄いことは、自分を苦しめる原因に。
共感性が強いのは、自分の感性を磨きプラスへと導きます。
自分にとって必要な共感と、自分を苦しめる共感を見極めて、排除していくこともまた大切なのかもしれません。
「マインズ・アイ」を上手に扱うHSPは、いろいろな場所で活躍できる!

HSPは「弱い」「繊細過ぎる」「行動が遅い」「引っ込み思案」など、とてもネガティブであり弱者のようなイメージもついてしまっています。
しかし、一般的な感覚の人がわからない部分まで想像できること、まるで目の前にあるかのように感じとれることは、才能以外の何者でもありません。決して超能力のような怪しいものではなく、あなたが持って生まれた「素晴らしい脳の力」なのです。
このマインズ・アイを上手に取り扱って、武器にしているHSPはとてもたくさんいます。
- 作家、ライター
- 画家、イラストレーター
- デザイナー
- 作曲家、ミュージシャン
- ダンサー
- コーディネーター
- 写真家
クリエイティブな仕事には、HSPの人が多くいます。今の時代は、さまざまなインターネットサービスを使って、自分の好きなことや得意なことを誰もが自由に表現し、発信できる時代です。
もしもあなたに、心から好きなことや世の中に見せたいものがあるなら、それを形にしてみてください。人が見えない部分まで想像できる力は、あなたが思っているよりもすごい能力なのです。
HSPのマインズ・アイはどんな分野でも必要とされるもの
HSPにとってクリエイターだけが向いてる仕事、というわけではありません。HSPの想像力や配慮は、どんな分野でも必ず必要とされます。一般的な感覚の人よりも、わかることが多いのです。それを、表に出すか出さないかで迷ってしまうことはとても多いと感じます。
ここで、自分が本当に「これは正しい」と思えることは、日常生活の中でもちゃんと言葉や形に表していってほしいです。人間関係や仕事、恋愛、子育て……ありとあらゆるところで「あなたの想像力」と「配慮の心」は生かされます。
HSPは「自分を守る」ことと「表現する」ことのバランス力を鍛えよう

HSPにとって、自分の世界を守ることはとても重要です。ただ、自分を守りながらも「やっぱりこれは素晴らしいものだ」「どう考えても重要なことだ」と思ったら、ちゃんと形に表してみましょう。
それを続けていけば、結果的にあなたにとっての「自信」になり、人生を楽しんで、自由にコントロールしていくためのマインドになります。
あなたの「マインズ・アイ」は、自分を苦しめるためにあるのではなく、自分を表現するためにあるということを、忘れないでほしいと思います。/Kandouya編集部