
典型的なHSPの特徴をもつ「内向型HSP」も、実はもともと外向型HSP、いわゆるHSS型HSPであった可能性があるということを知っていますか。
これは非常に重要なことだと、私は思っています。
HSPの提唱者であるエレイン・N・アーロン博士は『ひといちばい敏感な子』の著書の中でこう書き記しています。
HSPの70%は内向的でしたが、30%は外交的だったのです。おそらく70%の人は、外から受ける刺激を減らす一つの方法として内向的になったのでしょう。
ひといちばい敏感な子(p35)/エレイン・N・アーロン
本の中にはさらっと書いてありますが、私としては世紀の大発見くらいに思っています。
自分の長所に気づき、それを知らず知らずのうちに活かして生きているHSS型HSPは、逸材のような人です。そして、どのHSPももともとは外交的な要素をもって生まれているということになります。
HSPは、内向的・外向的に関わらず逸材だということになります。
なぜHSPは内向型と外向型に分かれたのか?

HSPが内向型と外向型にわかれた原因は「環境要因」にあります。
先ほどのアーロン博士の著書には、続けてこんな文章が書かれています。
私がインタビューした外向的なHSPの多くは、安心できる環境で、周囲の愛情をたくさん受けて育てられてきました。
ひといちばい敏感な子(p35)/エレイン・N・アーロン
周囲に自分のことを理解してもらい、無条件の愛情を受けて育ったHSPは、自分の中の知的好奇心をどんどん追及して外向的になっていくことができるというわけです。
ただ、無条件の愛をもらって育った人だけでなく、自分で自分の才能を活かせる場所や、好きなことを追求する場所を探して活躍したり、自分自身で外向型になる決心をして訓練したという人もいました。それだけでなく、親から外向的になるようにしつけられた人もいたとのこと。
つまり、HSPであることと内向的であることは別問題なのです。
内向型になる原因とは?

では、内向型になってしまう原因とは何なのでしょうか。
神経質・臆病・心配性・落ち込みやすい……こうした心理的特徴はすべて後天的に起こる傾向です。
実は私自身、自分はHSPなのか、それともHSPではなく後天的な要因でHSPのような特徴が出るようになったのか、判断しにくいと感じたことがありました。
私は幼少期から思春期にかけてトラウマ体験をもっている、いわゆる虐待経験者です。
たとえば……
- 他人の機嫌に振り回される
- 足音や外の環境に敏感
- 行動が受動的である
- 筋肉が縮まる
- 体力がなくすぐに疲れる
- 問題やもめごとを避ける
- 静かに目立たずにいる
- トラウマがある人はない人に比べて何倍も傷つきやすい
上記はすべて、トラウマ体験のある人の特徴です。HSPの特徴と酷似しているんです。
私の場合、親に「あなたは1言えば10わかる子供だった」と言われますが、それもHSPだからそうだったのか、親が怖いからそうだったのかは今となってはもう分からないのです。昔も今も痛みに強く、アルコールやカフェインにも強いです。痛みに強いのは、体の痛みに慣れて鈍感になっていた恐れもあるし、アルコールやカフェインは依存性の高い物質です。HSPであることと、敏感さに悩むというのは、正直イコールではないということが最近になってよくわかるようになってきました。
ただ、私は子供の頃に物語を読んで泣いたこともないし、幽霊や怪談話も好きでした。HSCは、怖い話が苦手であったり、感動話に弱かったりするんですが、私はそういうことはなかったように思います。
だから、もしかしたら私は本当はHSPではなく、後天的にHSPっぽくなっただけなのかもしれないとも感じています。もう、実証することはできないので確かではありませんが、その可能性もあるということです。
内向型になるには、理由がある
本来、HSPであってもなくても、人には知的好奇心や探求心があるものです。もちろん個人差はあっても、変化を好まず、いつもひとりぼっちでいたい子供なんて本当はいないはずです。
でも、そうするしかなかった子供もたくさんいます。そして、そんな子供が今もしかしたら「内向型HSP」になっているのです。
その理由は、さまざまでしょう。
- 人の輪にうまく加われなかった
- 臆病な気質のせいで親や教師から評価されなかった
- 親から批判的に育てられた
- 友達ができなかった
- 自分の言いたいことを言えなかった
- いじめにあった
- 外見や性格をバカにされたり笑われたりした
- いつもひとりで家族の帰りを待った
- 本当はやりたくないことを無理強いされた
「あなたの好きなように、あなたの思うままに」と育てられた人は、少ないです。日本人の8割は、子供時代を子供らしく伸び伸び育つことができなかった「アダルトチルドレン」であるともいわれています。
だから、HSPだから生きづらいというのは大誤解であるとともに、内向型になったのには理由があると、私は思っています。
内向型が悪いのではないが、内向型HSPであると決めつけないほうがいい

内向型になってしまった……などというと、まるで内向的なのが悪いことのように聞こえますが、そんなことはありません。内向的な人も、ときどき外向的になったり、時と場をわきまえて振舞ったりしているはずです。
ただ、どうしても内向型の人は「周囲から理解されないので内向的になるしかない」という側面があるはずなのです。私は内向型と外向型の特徴を両方もっている中間タイプなのですが、時と場合によって使い分けている部分もあるし、日や気分によって自分の気持ちも行動も違います。
つまり、HSPは内向型も外向型も、本来関係なくすべてひとつなのです。
だからこそ、今内向型HSPであると自覚する人も、HSS型HSPと同じ素質をもっていて、素晴らしい逸材になり得るのです。あなたが心の問題を解き解して、よき理解者に恵まれることで「外」に向けた考えや行動も、とっていけるようになる。
無理してそうする必要はないし、内向的が自分に合っていて、このままで十分幸せならばそれでもいい。
でも、本当はもっと自分らしく、もっと楽しく、もっとアクティブになりたい……
そんな風に考えているのであれば、それを実現させることはじゅうぶん可能だということを、多くのHSPに知ってほしいと思います。
HSS型HSPは超有能!という記事を書きましたが、どんなHSPもすべて有能なのです。ただ、自分の才能を活かして活躍したり、人生をより充実させたものにするためには、HSS型に近づくように自分を変えていくのではなく「解放していく」という作業が必要です。
守りたい誰かのためにエネルギーを使ったり、好きなことに没頭したり、仕事で良い成績をおさめて自信をつけたり……いろいろな方法があるし、その方法はなんでもいいのです。
人生を自分でコントロールしているという実感を得てほしい

生きづらさを抱えている内向型HSPには「自分の人生を自分でコントロールできる」という実感が必要です。誰のためでもなく、自分のために生きていい。自分が心から楽しい、好きだ、と思えることをやっていけばいいのです。そしてそれが、結果的に内向的行動や趣味であるならば、それでいいと認めましょう。反対に「自分はこのままでは終われない!」と思うのなら、行動を起こしていく他ありません。
HSPはもともと理解力が高いですから、自分の好きなことに神経を注げば爆発的才能を見せるかもしれないのです。そのことに気づき、そう信じてやってみてほしいです。
仕事でもいい、結婚でも、子育てでも、趣味でも、なんでもいいのです。自分にとってこれは人生の課題である、これだけは真剣に取り組みたいと思うことを、ただひたすら続けていけばいい。
すると絶対に何かヒントが見えてきます。自分の生きづらさや、必要以上に内的になってしまう理由なども、わかるようになるでしょう。どんな人も知的好奇心にあふれているし、素晴らしい才能をすでにもっています。自分の才能が何なのかを見極めるには、あなたが自分の心に問いかける以外にありません。
どんな人も「超有能」なんです。そのことを、多くの悩める人々に一刻も早く気付いて欲しいです。/夏野新