
HSPは、刺激に敏感であることや、人の感情エネルギーの影響をそのまま受け取ってしまうために「トラウマ」を抱えやすい側面があるとされています。
幼少期の体験は、人の人格形成に重要な意味をもっていますが、HSPの場合は一見ごく普通で特別な問題のない環境で育ったとしても、親や周囲の大人、友人などからの言葉や感情の影響を受けやすく、ささいなことも心の傷として残ってしまうおそれを秘めているんですね。
そこで私は「人の感情」とHSPのトラウマについてちょっと思い当たることがあるので共有したいと思います。そして、それはHSPと似たような傾向をもつ「エンパス」と呼ばれる人との関係も深いのではないかと、仮説を立てています。(あくまでも個人的な考えであり、専門家の意見ではありませんのでご理解くださいね。)
HSPとエンパスの違いとは?

HSP :科学や心理学の観点の概念
エンパス :スピリチュアル観点の概念
HSPとエンパスは、基本的にはよく似ているのですが、エンパスの特徴として「人の感情をそっくりそのまま体験する」「人の感情が乗りうつる」というような表現をされます。
一方、HSPはあらゆる刺激に対して敏感に受け取りやすい、という表現をします。科学的根拠や統計を基に、あくまでも学術的な見解を示すわけですね。
それに対してエンパスの特徴は、科学では解明できないようなことにもおよびます。たとえば……
- 霊感
- 予知夢
- 虫の知らせ
- 不思議な体験
このような第六感をもっている人も世の中にはたくさんいます。自分がエンパスかHSPか?という部分に悩んでいる方も少なくありませんし、自己判断では断定しにくいと感じている人も多いのではないでしょうか。
私個人的にいちばんしっくりくる解釈は
「HSPという大きな敏感なグループがあって、その中に科学的に解明できない特徴をもつエンパスという傾向もある」
という感じです。人間はさまざまなコントラストがありますので自分はコレ!とひとつにカテゴライズしきることは難しいのではないかな、ということも思っています。そのため、この記事ではエンパス傾向のあるHSPという風に、両者を同じグループとして扱い、表記していきますね。
エンパス傾向のあるHSPは、人の感情をまるごと体感する
あくまでも私の個人の仮説ではあるのですが、私の場合「接する相手がどんな感情をもって行動をとっているか」という部分に着目しています。
エンパス傾向のあるHSPは、人の感情が読めるとか、わかるというよりも「相手の感情がそっくりそのまま自分の中に入ってくる」という場合があります。
相手が楽しい!と感じていれば、なんだか自分もハイテンションになってくる。そして、相手の悲しみや怒り、恐怖などのネガティブな感情も、コピーして体感します。
まるで感情の濁流に飲まれるような感じで、自分の中で混乱が起こるような感覚になることもあります。
エンパス傾向のあるHSPと、トラウマ
私自身、自分をエンパス傾向のあるHSPだと思っています。そして、私はトラウマ体験をもっているのですが「なぜ自分がここまでトラウマを引きずっているのか?」ということにものすごく疑問が残っていたんですね。
もちろん、心的外傷を癒すにはたくさんの段階、プロセスがありますから長期化するのは不思議ではありません。しかしなんとなく納得がいかなかったり、自分の心に矛盾する現象があったのでずっと考えていたんです。
そこでわかったのは、私のトラウマは、相手の「不安や恐怖」からくる感情の爆発であった可能性があるということ。
私の場合、母親からの暴言や体罰といったものが根強いトラウマになったのですが、当時のことを改めて思い返してみると、私は母親の感情の高ぶりが始まると同時にひどいパニックを起こして泣きわめきました。毎回、普通ではありえないような泣き叫び方をしたんですね。
しかし、それ以外の場所で人から注意されたり、叱られたりすることに対しては割と平気でした。また、母親が冷静な精神状態で接しているときは、普通の親子となんら変わりはない状態。何事もわりと冷静に受け止められるし、パニックを起こすこともありませんでした。
母親はなぜ、しょっちゅう感情の爆発を起こしたかというと、母親自身が過去に親や元配偶者からの暴言や暴力を受けている、トラウマ体験者なのですね。つまり、母自身が複雑性PTSDを抱えており、トラウマからくる恐怖で感情コントロールができなくなっていた可能性が高いです。(複雑性PTSDとは、長期的な精神的苦痛を感じながら生活することにより人格・行動に問題が生じる症状)
私は母親を通じて、母親の感じた恐怖を、そっくりのそまま受け取っていたのだと考えています。
つまり、私は母親から受ける言葉や暴力といった、目に見える刺激からくる恐怖と、母親自身の恐怖の両方を受け取っていたのではないか……と考えているのです。そう考えると、トラウマによる生きづらさが長期化することも不思議ではありません。それに、メカニズムがわかりにくすぎます。
また「目に見えてわかる被害」と「本人が感じとっている恐怖感」はまったくバラバラだということにもなります。
普段の生活でも、街中で母親が子どもに感情的になっている場面に出くわすとドキドキして怖くなることがあります。しかし、夫が子どもに対して怒っているのを見ても、怖いとは感じません。何かに怒っている人すべてが怖いわけではないのですね。
同じ「怒り」でも、その人の心がどんな感情によって怒りを発しているのか、という部分に大きな発見、ヒントがあると思うのです。
エンパス傾向のあるHSPは、相手の恐怖を追体験する
エンパス傾向のあるHSPは、このような大きなトラウマ体験だけでなく日常のあらゆる人の「怒り」に反応しているはずです。
単純に、物理的な問題を改善するために厳しい言葉でものを言う人に対しては、きっと怖さを感じにくい。「そりゃ、怒るよな」というような感じで見ることができます。
しかし、相手の中に「焦り」「不安」「恐怖」といったものが「怒り」の形になって出てきている場合、こちら側も同じ感情になりやすいのですごく怖いんです。相手がどんな心情から「怒り」を出しているのか、というのは重要だと思っています。
ただ、怒るというのはほとんどの場合が「不安」からきています。感情的になる人と、ならない人の違いは、自分の不安をコントロールできているか否かがすべてだといってもいいと思っているんですね。だから、HSPが感情的になって怒る人を見ると、緊張や委縮をするのは当たり前。またエンパス傾向が強ければ強いほどその恐怖感は増し、心の傷になりやすいとも考えています。
エンパス傾向のあるHSPは「感情の器」があるイメージ

HSPのすべてが、人の感情エネルギーに反応するわけではないとされていますが、そのイメージの違いを明確にするのって結構難しいですよね。
私は、自分を器やコップに置き換えるようなイメージをもっています。心の中に、人の感情を受け入れるための器をもっているということです。ただ、それによってマイナスイメージを抱いてしまうことや、生きづらさを感じることもあります。
- 相手の感情に合わせるのが得意
- 相手に合わせることが無意識にできてしまう
- 自分の中から湧き上がる意思が薄い
- 合わせる相手がいないと不安定になる
- たくさんの人が集まるとどの人に合わせるか迷う
「人に合わせることはよくない」「自分軸をもって意思を表明していかなければならない」……というのが近年よく言われる精神論ですが、私はエンパス傾向のあるHSPにとってそれは酷なことだと思っています。
エンパスは、常に器なのです。人の感情を受け入れる器、コップをもっているんですね。だから、1対1や少人数の人間関係ではうまくいきやすいのでは。
しかし、不特定多数の人と接する機会や、自分の思いを発信するとなると、ちょっと難しいように感じることもあるように感じています。コップが溢れてしまうとか、誰の感情を受け取ればいいかわからず、混乱するのです。
共感力といっても2種類あります。「理解できる」というのが「シンパシー」で「共鳴する」のがエンパシーです。どっちもバランスよく使い分けられるのが理想なのですが、エンパシー傾向が強いということに気づかないうちは、おそらく自分に対してとてもネガティブな印象を持ってしまうと思うのです。
- コミュ障
- 不器用
- 八方美人
- 他人軸
- 不安定
- 感情的
私自身、実際このように、自分をもっていないとか、人に合わせがちで地に足がついていないように感じてしまうこともありました。
しかし「エンパス」という、他人の感情の受け皿をもっている人であることを知れば、それも自分なのだと受け入れることができると思うのです。
エンパス傾向のあるHSPは、感情を客観視するクセを

自分にエンパス傾向があるなと感じる場合、感情を常に「誰のものか?」と客観視するクセをつけてみるといいです。
もしくは、得体のしれない感覚が湧いたときや、コントロール不能になりそうになったときには「あ、今他の人の感情が侵入しているな」と捉えることで、少し冷静になることができます。
最初からうまくできるわけではないのですが、意識を向け続けていると自分と他人の感情を分けることができるようになるんです。振り回されたり、飲まれたりすると、人間関係での衝突や感情の爆発が起こります。私が母の感情を受け取って、恐怖で泣き喚いたのはそういうことだと思っているんです。
私たちHSPは、論理的に考えて制御していく力もしっかり持っていると思います。そして、人の感情の影響を受けない時間をしっかりと持って、心を静かにさせる時間も大事ですね。湖にたくさんの人や船がいるときは水面に波が起こり、揺れます。でも、ひとりで静かにする時間をしっかり作れば、水面はまたフラットな状態に戻るわけです。
HSPやエンパスの心もそんな感じなのかなぁと、私は考えています。/夏野 新